オタクの落書き帳

脳が働かない人間の戯言

【第3回】読んだライトノベルを振り返る【2022上半期編】

 7月と1月におなじみとなりつつあるこの企画。今回もやっていきましょう。

 …と言いながら、今期は結構いっぱい読んだので、全部紹介する代わりに前回ほど詳細に書くつもりはないのでよろしくお願いします。どうせ見てる人なんていないし…。

 

1.わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 1~4 / みかみてれん イラスト:竹嶋えく

dash.shueisha.co.jp

刊行巻数:既刊4巻

出版:ダッシュエックス文庫

読んだ時期:1月

 

今期のおすすめその1

 通称「わたなれ」。これは本当に求めていたタイプの百合ノベル。がっつきすぎず、かといってほんのりすぎず、この曖昧とも言える距離感で進んでいく百合が個人的には大好きです。登場人物もキュート、クール、パッション、王塚真唯とバリエーション豊かで、掘り下げも1巻ごとに行うのでめちゃくちゃ丁寧。それぞれのキャラクターの性格に影やバックボーンとなる部分がある「二面性」も実に良い。主人公のれな子が読者に投影できやすい性格なのも相まって、百合小説というよりは青春ラブコメの一種として楽しむことが出来るのも好印象。

 個人的な好みは瀬名紫陽花さんゆるふわキュートな癒やし担当というか、もうなんかそういう次元を超越した天使。1・2巻から何か恋の香りが匂ってくるタイプの立ち位置の子なんですけど、3巻以降がもう、最高ですね……。幸せになってくれよな……紫陽花さん……。

 竹嶋えく先生の可愛らしいイラストも完璧。女子高生のキラキラした感じがばちこーーーんと出ていて最the高ですよ。れな子の少し芋っぽいところとかもうまく再現されてるし……。むっしゅ先生の描かれている漫画版もこの雰囲気を受け継いでいるし字だけじゃ見えない細かいわちゃわちゃ感もよく出ていて本当にさ……神なんですよ……読んでよ……。

 

2.女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話 1~5 / みかみてれん イラスト:雪子→緜

www.amazon.co.jp

刊行巻数:既刊5巻

出版:GA文庫

読んだ時期:1月~7月

 

 同じみかみてれん先生の作品で、通称「ありおと」。なろう系によくある長文タイトルではあるが、なろう系以上にタイトルで落ちていて潔い。なんなら百日間どころか…というところではあるが、そこを問い詰めるのはあまりにも野暮。ゆるい百合で済む「わたなれ」と違い、こちらは最後までいちゃいちゃたっぷり。女の子同士ならセーフや!と言わんばかりの濃厚なゆりえっちもこれでもかというほど詰め込まれているので、えっちな百合本ってどんなんだろう…って思っている人向けかもしれない。

 「わたなれ」もそうだが、みかみ先生の作品は「愛とはなにか」というテーマに従って書かれていることが多く、「わたなれ」も「ありおと」もどこか似た雰囲気を感じることが出来るだろう。

 挿絵の雪子先生も緜先生も女の子わちゃわちゃ系の「わたなれ」とはまた方向性の違う、ちょっとシックな感じの少女漫画っぽい絵柄なのがまたいいですね。ちなみに緜先生は最近話題のにじさんじのお嬢様VTuberの元絵も担当されている方ですね。

 ちなみに本作を読み始めたきっかけは身内のAmazon配送先ミスからだったのですが、そのミスった先から送られてきたときの年賀状が酷すぎたので一応ここに供養しておきます。

 

3.才女のお世話 1 高嶺の花だらけな名門校で、学院一のお嬢様(生活能力皆無)を陰ながらお世話することになりました / 坂石遊作 イラスト:みわべさくら

hobbyjapan.co.jp

刊行巻数:既刊3巻

出版:HJ文庫

読んだ時期:2月

 

 1月から3月にかけては、今年の頭に某ブックスで「冬のライトノベル祭り」が開催されたのもあり、グッズ目的で結構いろいろな作品に手を出してみたという感じだった。それらの中で一番最初に手を出したのがこの作品。表向きは完璧で見目麗しい天才少女だが普段は生活力皆無で……というヒロインをあるきっかけで主人公が目の当たりにし、その少女を支えていくというタイプの作品。『さくら荘のペットな彼女』とかもそうなのだが、悲しいことに私はこういう作品に対してはあまり琴線に触れないらしく、1巻で満足してしまった感がある。内容としては非常に面白かったのだが、何がこんなに肌に合わないのか、コレガワカラナイ。

 

4.ヒイラギエイク / 海津ゆたか イラスト:やすも

www.shogakukan.co.jp

刊行巻数:単巻完結

出版:ガガガ文庫

読んだ時期:2月

 

 この本に出会うまでは自分も知らなかったのだが、ガガガ文庫には『Hello,world.』『サマーウォーズ』『さよならの朝に約束の花をかざろう』のような雰囲気の「夏物青春ファンタジー枠」みたいのが存在するらしい。『ヒイラギエイク』はその一冊だ。舞台は山中の片田舎。主人公・出海と少女たちの濃密で楽しい日々の中で、その村に現れる不思議な少女と、賑やかながらも何かをひた隠しにするかのような村の人々の様子が影を落としながら展開していく内容となっている。張り巡らされた伏線と、その回収の手法、そしてラストに向けての怒涛の展開の連続は、きっとあなたを楽しませてくれるだろうし、一時だけ少年・少女時代に戻してくれることだろう。

 やすも先生の柔らかいテイストのイラストも作品の雰囲気によくマッチした温かさを持っていて大変良い。ライトノベルというよりはアニメ映画として楽しむくらいがちょうどいいのかもしれない。

 

5.夏へのトンネル、さよならの出口 / 海津ゆたか イラスト:くっか

www.shogakukan.co.jp

刊行巻数:単巻完結

出版:ガガガ文庫

読んだ時期:2月

 

 これもまた「夏物ファンタジー枠」。しかもこちらは先程に例示した作品たちにより雰囲気が近いかもしれない。「失ったものを取り戻す」タイプの作品は見ている・読んでいる側に感情移入させやすく、失ったものが主人公・塔野カオルに身近であり、それによるショックが大きいような人物であることが望ましい。そういう意味ではこの作品のスタート地点は凡そ完璧と言えるだろう。そしてヒロイン・花城あんずが強気でガンガン地を貫き通す姿、これもまた良い。はじめは捻くれた性格で、あんずに振り回されているだけのカオルだったが、徐々に自分に正直になっていくさまも実に王道らしい。

 しかも、なんとこの夏にアニメ映画化が決定している。果たして『さよ朝』や『ハロワ』に次ぐ人気作品となれるのか。個人的には結構面白かったので、程々でもいいから流行って欲しいなと思う。

natsuton.com

 

6.彼なんかより、私のほうがいいでしょ? / アサクラネル イラスト:さわやか鮫肌

dengekibunko.jp

刊行巻数:単巻完結

出版:電撃文庫

読んだ時期:3月

 

 百合ノベル枠その3。感覚としては「わたなれ」と「ありおと」の中間くらいの雰囲気。幼馴染にただならぬ恋愛感情を持つ少女・鹿乃と、それを知ってか知らずか彼女に「好きな男ができた」と告げる容姿端麗優等生・音々の駆け引き(独り相撲?)が見どころだ。電撃文庫には珍しく結構水っぽい表現もあり、作者本人も電撃文庫出禁の覚悟でやっている気配すら感じられる、なかなかチャレンジングな作品である。

 ただ、全体的にちょっとえっちなギャグテイストで進んでいくこの作品、話が進んでいくにつれて、それだけでは言い表せないというか、ただならぬ雰囲気が漂い始める。その違和感は徐々に膨らんでいき、ラストの数ページで「やっぱりそうだったのか~」という気持ちにさせられるので、頭空っぽよりではあるが結果として読後の満足感はそれなりに得られると思う。いい意味で意地の悪い女の子、きらいじゃないよ。

 単巻完結じゃないと出来ない内容なのはわかっているけれど、続刊がもしあったら読みたくなるような、そんな作品だった。

 

7.ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います 1~4 / 香坂マト イラスト:がおう

dengekibunko.jp

刊行巻数:既刊5巻

出版:電撃文庫

読んだ時期:4月

 

今期のおすすめその2

 タイトルこそ異世界転生系みたいな長文タイトルのそれだが、内容としてはラノベ特有のゴリゴリ王道ファンタジーもの。しかもシンプルに超面白い。「気が強くて腕っぷしも強い女、好きだろ?」みたいなストレートさも非常に好印象。ちなみに僕は強い女の子大好きです。あらすじの内容からするに無双系なんでしょ?特に伏線もなくて…みたいに思われる方もいるかもしれないが(タイトルが長文なのももしかしたらあるかも)、ところがどっこい。「どうしてパーティで探索するの?」「受付嬢ってどういう仕事なの?」「ダンジョン攻略ってどうやって行われているの?」といったファンタジー世界ではあまり掘り下げられていない部分についてがっしりした設定と世界観が練られており、かつ伏線も充実していて、電撃大賞金賞の名に恥じないものになっている。タイトルだけで忌避しているそこの君、まずは騙されたと思って読んでみないか…?

 湊あくあ、餅月ひまり等のVTuberのデザインの産みの親として知られるがおう先生によるほっぺぷにぷに系挿絵もこれまた良い。イラストにも恵まれている本作品、マジで読んだほうがいいって。

 

8.〆切前には百合が捗る / 平坂読 イラスト:U35

ga.sbcr.jp

刊行巻数:既刊3巻

出版:GA文庫

読んだ時期:5月

 

 百合ノベル枠その4。今期百合作品読み過ぎじゃねえ?

 平坂先生の作品といえば『はがない』『妹ちょ。』とかなんですけど、実はまともに読んだことある作品は一個もなくて、今回の『〆百合』が初平坂作品という逆張り具合なんですが、読みやすくて世辞なしにとてもスルッと頭に話が入ってきますね。批評なんかだと「中身がないやんけ!」なんて意見もあったりしたけど、普通に「読みやすい」っていうのはラノベとしては結構重要だと思ってる。どうしてもゴテゴテした作品って読み応えもあるけど、たまには息抜きでこういう中身は薄いかもしれないけどスラスラ読める作品も必要だって僕は思うんだけど、世間様はそうでもないのかな?ていうかラノベの売りの一つに「キャラクター同士の軽快な掛け合い」っていうのがあるので、それに関して言えばまず間違いなく平坂作品はすごく優れているな、というのは感じた。設定こそ面白いけど会話が鬼つまらん、みたいなやつ山ほどあるので、その点「読ませる作品」になっていて非常に良かった。

 

9.変人のサラダボウル / 平坂読 イラスト:カントク

www.shogakukan.co.jp

刊行巻数:既刊3巻

出版:ガガガ文庫

読んだ時期:6月

 

 こちらも平坂先生の作品。ほのぼので進んでいく『〆百合』に対し、こちらは終始ギャグで展開していくもの。内容としては「逆異世界転生」みたいな感じで、ファンタジー世界の住人が現代日本に飛んでくる、というもの。この世界については実は終盤で正体が明かされるが、発想としてはかなり面白いものだった。やはりこちらもサラサラ読めるもので、200ページ超でありながら1時間程度で読めたので、ちょっと暇だし本を読むかと思った時にちょうどいいのかもしれない。

 『〆百合』もそうだが、先の特徴に加えて平坂作品は「キャラクターの濃さ」と「テンポの良さ」が売りだなと思う。読んでる側にとって「読んでて退屈」は一番読むのをやめてしまう原因になるものだが、その点においては非常に読んでて退屈せず楽しめるなと感じた。

 

10.塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い / 猿渡かざみ イラスト:Aちき

www.shogakukan.co.jp

刊行巻数:既刊7巻

出版:ガガガ文庫

読んだ時期:6月

 

 前々から詳しい内容こそ聴いたことなかったもののカバーイラストが推しているAちき先生なのもありめちゃくちゃ気になっていた作品で、某オタクショップのラノベフェアをいいことに購入し、最後に読もうと思ってこの時期まで放置してしまった。実際読み始めてみると、いわゆる「両片想い系」であり距離感のもどかしさに悶々するタイプの作品だった。どうやらこの猿渡先生はこういう「両片想い系」が得意らしく、このシリーズ以外で書いている他の著書にも両片想い系が見られる。主人公達2人の反応がいちいち初心で、高校生の恋ってこんな感じなのかな…と失われた青春時代になんとなく思いを馳せるなどしてしまった。

 この話で結構面白いなと思ったのはキャラクター同士の繋がりがストーリー開始時点で多くあることだ。押尾くんと佐藤さんのお互いの父親然り、二人が入った服屋然り、何かしら彼らの親族との付き合いがあり、サブキャラクターの豊富さが伺い知れる。結局2巻以降を買ってはいないが、折を見て買おうかなーとは思っている。こういうとき大体買わないんだよな。

 

11.負けヒロインが多すぎる! / 雨森たきび イラスト:いみぎむる

www.shogakukan.co.jp

刊行巻数:既刊3巻

出版:ガガガ文庫

読んだ時期:6月

 

 今期やたらと多かったガガガ文庫ものもこれが最後。あんまり「文庫買い」みたいのはしない人なんだけど、たまたま今期がガガガに偏っただけみたいな感じになった。

 さて、この作品はタイトルのとおり、多種多様な「負けヒロイン」と呼ばれる女の子が登場し、主人公・温水くんとラブコメ未満のラブコメを展開していく。「負けヒロイン」という存在自体は沢村・スペンサー・英梨々だの草野優衣だのといろいろいたが、こういう言われ方をされ始めたのはここ最近のことだ。そもそも「負け」という表現自体がちょっと棘のある言い方なのであまり流行るべき言葉ではないんじゃ……とも感じるところはあるが、逆に言うとなかなか他に当てはまる言い方ある?って言われると悩んでしまうのが困ったところである。内容としてはちょっと「俺ガイル」っぽい、部活動を通した日常の中で変化していく人間関係をメインに描いており、少し懐かしさすら感じる物となっている。この作品の中であなたのお気に入りの「負けヒロイン」をぜひ探してみてほしい。

 

12.ラブコメ・イン・ザ・ダーク / 鈴木大輔 イラスト:tatsuki

mfbunkoj.jp

刊行巻数:既刊1巻

出版:MF文庫J

読んだ時期:7月

 

今期のおすすめその3

 今回の記事の内容を読んでもわかるように、もう既にこの企画自体に疲れが見え始めており、そろそろやめた方がいいんじゃ…と思い始めたので、思い切って7月に読んだ本も書けるうちにここに置いておくとする。というのも、この作品についてはどうしてもやめる前に紹介しておきたかったからである。

 この作品を知ったのはあるYoutubeチャンネルだった。アニメ・ラノベレビュー界隈ではそこそこ名の知れた人で、動画の内容はしょうもないものもあるものの総じて評価が結構当てになるのでよく見ていたのだが、その中で特に好評していたのがこの作品だった。

 タイトルにこそ「ラブコメ」などと謳っているが、その実態はダークファンタジーものである。設定こそこれなんてエロゲの導入?という感じがあるものの、蓋を開けてみると一昔前の、ちょっと痛々しさも滲み出ているような伏線もりもりセカイ系が読者を迎え入れてくれる。天神ユミリという絶対的かつミステリアスなヒロインと、ジローという不甲斐ないオタク少年くんが織り成す軽妙なやりとりも実にラノベらしい。「おい、ラノベオタクくん!笑 きみこういうの好きだろ?笑」みたいな展開が盛り沢山で大変僕好みだった。繰り返しにはなるが、僕は「気の強くて物理的にも強いヒロイン」がアホほど好きだし、中性的な雰囲気だと尚良しだと思っているので、天神ユミリという存在は結構どストライクだった。

 8月には2巻も発売されるらしい。まだまだ謎が多い作品ではあるが、これからどう展開するのか、楽しみで仕方がない。タイトルで「えーっ、ラブコメかよ」と思ったそこのお前、人気になる前に買っておきなさい。

 

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 駆け足にはなったが、以上12作品を紹介した。後半は作品の内容を忘れてしまった部分があり当たり障りない内容ばかりの紹介となってしまったが、今回紹介した作品はどれも面白かったので、興味を惹かれたらぜひ読んでほしいと思う。

 もちろんこれら以外にも、以前紹介した小説の続刊もいくらか読んだ。

・処刑少女の生きる道7(アニメよかったね~!)

・推しが俺を好きかもしれない2(再度紹介したいくらい面白かった。憂花…)

りゅうおうのおしごと!10~12(嬉しい展開も増えた分、辛い展開も増えて辛い)

・こんな可愛い許嫁がいるのに、他の子が好きなの?2(ヤンデレ女が増えてて笑う)

 大体月3冊くらいのペースで読んでいるので、毎回この記事書いている時に「これもう書くのやめよかな~」とか思ってても半期が終わる頃には「書くか~」って気持ちになってしまう。まあぶっちゃけ26にもなってこんなの読み耽っているのはいささかどうなのよ、という気はするが、楽しめている間はそれに甘えていようと思う。

 それじゃあ今回はこのへんで。来期も面白いのたくさん読みたいっすね。