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【Unagi-Network Advent Calendar 2023】2023年のクトゥルフ神話TRPGを振り返る② ~回ったシナリオ編~

※本記事は、3本立てとなっているうちの「2本目」となっております。

 1本目である「回したシナリオ編」を読んでいない方は、先にそちらを読むことをお勧めします。

 

こんにちは。

昨日に引き続き、2023年のクトゥルフ神話TRPGを振り返る記事をお送りいたします。

今回は「自分がPLとして回ったシナリオ編」です。

 

 

0.全体を通して

・昨年・一昨年はなにかとKPをやることが多く、PLをやる機会が結構減ってきていたのですが、今年はたくさんPLをさせていただきました。自分がよくKPをやっているからこそかもしれませんが、やはり回してくれる方がいる、というのは幸せなことですね。(もちろん、自分がKPやるときにPLをやってくださる方がいるのもとても幸せなことだと思います。)

・新しい卓への参加で、単純に交友関係が広がったし、他の方のプレイスタイルを見る機会が増えました。キーパリングやRPの点で学ぶことも多くありましたし、今まであまり触れてなかったジャンルのシナリオを回ってその面白さに気づくこともできました。いくつになってもどの分野でもそうですが、やはり知見の裾野を広げていくことは大事ですね。

・また、シナリオを回ったことをきっかけに今までの卓のメンバーとも時折遊ぶ機会が戻ってきたのも嬉しいところです。こちらが回ったシナリオを回したり、前みたいにオリジナルシナリオを回していただいたりすることもあったので、ひとつの卓だけでなくいろいろな卓でTRPGさせていただいたなあ、と感じております。

 

総括してPLの目線から学ぶことが多かった1年。

ここからは、今年回ったシナリオの中で特に印象に残ったシナリオを10個選びまして、それぞれのシナリオの紹介や振り返りをしていこうと思います。

回したシナリオ同様、振り返りの方がやや多くなってしまいますが、ご了承ください。

 

1.カタシロ / ディズム

dizm.booth.pm

傾向:対話型・RP中心・短時間

人数:1人固定

通過時期:1月

自探索者:空ヶ瀬 乙羽

<あらすじ>

 探索者は、目が覚めると病院にいた。
 医者が言うには、雷に打たれたらしい。
 それ以前の記憶は、失われている。

☆こんな人におすすめ!

探索者の考え方を深めたい

NPCとひたすら対話してみたい!

RP中心のシナリオを体験してみたい!

 

 「回った」の方で紹介した『忘れじの理想郷』『帰らじの理想郷』と同じ、ディズム様の作品。

 今年新しくお世話になった卓での初めてのセッションです。

 卓主の方がTwitterでカタシロの参加者募集をしているところをたまたま見かけてこちらから声をかけさせていただいたのがきっかけでした。今年ここまでTRPGできたのはそのツイートのおかげと言ってもいいと思います。

 探索者は「空ヶ瀬 乙羽(そらがせ おとは)」

 「自分に考え方の近い探索者」ということで、思考ルーチンはそのままにリアルの自分をベースにワナビをこねくり回して作り上げた女子大生です。表向きは明るいけどちょっとネガティブで、最終的に考えの根底に自己保身というか身勝手さがにじみ出ているタイプの探索者。名前は自分の名前をアナグラムしてもじりました。

 話し方も思考ルーチンも一緒なのでRPしやすかったですね。しかもKPも聞き上手だし話の引き出し方が上手なので、とてもやりやすかったです。

 時間としても短いし、対話型ということで人によって受け答えが変わるシナリオなので、回していただいた後早速大学卓の方でも回させていただきました。

 KPとPLだと見える景色も全然違うので面白いですね。回ったシナリオを回すときって「自分が回った時の追体験をしてほしい」という気持ちもあって、そのため当時のKPの話し方や回し方を自然と参考にするので、キーパリングの勉強にもなりました。ありがとうございます。

 

2.足跡と残り香 / Hi-Rune

booth.pm

傾向:伝奇もの・探索中心・しっとり

HO有

人数:1人固定

通過時期:たしか2月

自探索者:鈴瀬 翠蘭

<あらすじ>

 探偵・刑事として日々を過ごす探索者の元に、ひとりの女子大生がやってくる。

 話によると、連続行方不明事件に巻き込まれた親友を探してほしいというのだ。

 依頼を受け調査を続ける探索者は、やがてこの町に潜む秘密を知ることになる。

☆こんな人におすすめ!

王道系の探索シナリオをやりたい!

・自分の住む町に潜む謎に挑みたい!

探偵・刑事のRPに徹してみたい!

 

 僕が入り浸っている身内鯖にシナリオをよく書くやつがいまして、時々遊ばせていただいていたのですが、今年の夏コミで本になる!ということで、テストプレーとして遊ばせてもらいました。

 彼はクトゥルフ神話知識がたいへん豊富で、舞台設定も作りこまれているので、短いシナリオでも深みがあります。

 また、「神話生物に対して人間は無力である。しかしそれでもやれることはある」という信条のもとにシナリオが作られているので、古き良きクトゥルフも人間ドラマも熱い展開もできるオールラウンダーなライターです。まあ、そのせいで過去に散々泣かされもしたので、個人的にはいい意味で許せない人間のひとりです。

 今回のシナリオも非常に面白く、彼の信条まっすぐの内容だったので、楽しく探索できました。依頼者が同行NPCになるので、その人のプレイスタイルによってRPの量も調節できるようになっており、柔軟性の高いシナリオでした。

 これもまたシナリオが発売された後、何人かに回させていただいたのですが、全員終わった後余韻に浸っていました。どういう意味の余韻に浸っていたかは、シナリオを回ったり読んだりしてみればわかります(露骨すぎる宣伝)。

 本シナリオに連れて行ったのは「鈴瀬 翠蘭(すずせ みか)」という探索者。変装が得意で物腰柔らかな、でもちょっとお茶目な探偵です。特に行くシナリオもないときにふらっと作りたくなって作った探索者で、ずっと使えていなかったのでここで使わせていただきました。NPCとの相性も、セッションとの相性も“いろんな意味”でよかったので、連れてきてよかったです。汎用性の高い探索者なので、今後も連れていけたらいいなあと思っています。

3.レトロスペクティブ・ペトロイコル / 木星雑貨店

booth.pm

傾向:RP中心・しっとり・軽度のホラー

秘匿HO方式

人数:3人固定

通過時期:4月

自探索者:空木 舞香(HO1)

<あらすじ>

 HO1の呼びかけで中学生ぶりに集まることになった探索者達。

 その出会いが、幼い頃の記憶を呼び起こさせる。

 湿ったような、生臭いにおいが、鼻腔を掠める——

☆こんな人におすすめ!

ノスタルジーな雰囲気に浸りたい!

親友だった3人でまたわいわいしたい!

忘れていた記憶を呼び起こしたい!

 

 kem様・んj様の2人で構成される、サークル『木星雑貨店』の作品。

 学生時代の同級生という共通点や年齢設定から少し『忘れじ』『帰らじ』みたいなシナリオ?と思った方もいるかもしれませんが、近いのはそこだけでHOも中身も全然違います

 行われたきっかけはほぼほぼ突発。木曜に突然メンバーとして指名があって今週末いけます?→いけます!で卓が立ちました。

 KPはカタシロと同じ方で、PLのおふたりとはPLとして同卓するのはここが初めて*1でしたが、初めてとは思えないくらい息の合ったセッションでしたし、おふたりのRPがレベルも解像度も高くてすごく刺激を受けたのをよく覚えています。

 いただいたHOを基に、自分が前向きで活発なお姉さん気質の探偵、ひとりが未知の現象を求めて研究を続ける科学者、もうひとりが孤児院出身で現在はVtuberとして活躍する男の子をそれぞれ持ってきたのですが、各々の得意なRPスタイルに合致していたのも大きいと思います。HOを各々で選んでもらう形式でこれだったので本当にすごい偶然。

 KPもカタシロのRPとはまた違った、シナリオの雰囲気に合わせた柔らかく温かみのある語り口で回していただいて、安心して回ることができました。今年のTRPGはターニングポイントと言えるセッションがいくつかあるのですが、これが一番大きかったと思います。

 シナリオも、半年以上経った今でも感情になれるくらい好きなタイプの話です。あまり言うとネタバレになってしまうのですが、冒頭のホラーテイストから徐々にシナリオの色合いが変わってくるのが印象的です。まさに「レトロスペクティブ」なシナリオだと思います。

 探索者は探偵の「空木 舞香(うつぎ まいか)」。「印象的な自探索者編」で紹介するのでここでは割愛しますが、僕の手癖全開な探索者です。

 余談ですが、この時のPL3人は後に各々違う理由でプレイ時間を引き延ばしてしまう「遅延3兄弟」と呼ばれてしまうようになります。ぼくたちはただたのしくTRPGをしているだけなのに……なにもわるいことしてないのに……どうして……;;;;

 

4.Good Morning ALL / あお

傾向:ファンタジー・RP中心・低SAN非推奨

秘匿HO方式

人数:2人固定

通過時期:6月

自探索者:クレア(HO不老不死)

<あらすじ>

 おはよう。世界滅んだよ。

☆こんな人におすすめ!

ファンタジー風シナリオを回りたい!

終末世界でずぶずぶのうちよそがしたい!

不老不死/重病人の探索者を作ってみたい!

 

 『胡桃炸裂症候群』『明晰夢にて』で知られる、サークル『キメオール』のあお様の作品。通称『ぐども』。

 トレーラーの段階から「数万年後の地球」「不老不死」「世界滅亡」とファンタジー色マシマシな単語が飛び交う、“暇”な不老不死と“死ぬ”重病人が織りなすバディシナリオです。サイエンスではなく「スペース」の方のSF、と言ってもいいですね。

 このシナリオ、もう本当にすべてが大好きです。多くは語れませんが、舞台設定もシナリオの内容も、秘匿HOの内容も僕の性癖に刺さる要素ばかり。未来の地球の設定もかなりしっかり作りこまれており、こだわりを感じます。

 KPは『ペトロイコル』でVtuberの探索者をやった方、相方は『忘れじ』を持ってきていただいた方でした。KPがPLの心情に感情移入というかめちゃくちゃ寄り添ってくれますし、いろいろ確認しながら丁寧にキーパリングしてくれるのでとてもやりやすかったです。NPCの“めーちゃん”、めちゃくちゃ好きです。

 相方の「重病人」HOはとある事情でピアノから離れることになってしまった元ピアニストの女性。『忘れじ』もそうでしたがRP強者で、こっちのRPにガンガン乗っかっていただいていたし探索者の解像度もめちゃくちゃ高かったので、とても没入感の高いセッションになりました。没入しすぎて多分セッション中に馬鹿ほどデカい声を出したのもこのシナリオしかないです。お隣さんに怒られなくてよかった。

 こちらの探索者は「クレア」という女性。この人も「印象的な自探索者編」で紹介します。白髪赤目が特徴的な、どこか浮世離れした方です。

 この辺から、『ペトロイコル』で加速したRP沼への沈み方がさらに加速したような気がします。秘匿HO×バディシナリオの面白さにも気づいたセッションでもあるので、ここも大きなターニングポイントです。

 

5.心臓がちょっと早く動くだけ / 因

www.pixiv.net

傾向:探索型・RP中心・クローズド

人数:(本当は)1人固定

通過時期:6月

自探索者:高蝶 小夢

<あらすじ>

 いつも通り日常を過ごす探索者。

 けれど、何かが足りなかった。

 そんなある日、気が付くと謎の施設に飛ばされていた。

☆こんな人におすすめ!

KPCといっぱいやりとりしたい!

・自探索者の日常に彩りを添えたい

・お手軽に自探索者の造詣を深めたい

 

 当時卓に入ったばかりの方を入れてさっくり回せるシナリオを回そう!ということで自分を含めた未通過者を合わせて回ることになったシナリオです。

 本来はソロで回るシナリオなんですが、その方がまだTRPG始めたばかり、ということでKPの計らいで3人で回していただくことになりました。KPは『カタシロ』KPと一緒の方だったのですが、こういうところの柔軟性の高さが本当にすごい。

 PLはその方と『ぐども』の相方の方と自分です。

 セッションの方は探索型でありながらKPCがいてRP中心ということで、3人とKPCで時にはわいわい、時にはしんみり系のRPをしながら楽しむことができました。PL同士のちょっとした偶然もあって、探索者に共通の設定を持たせたのも面白かったですね。詳しくは「印象的な自探索者編」で紹介します。

 本記事はCoCに絞っているので紹介していないのですが、このセッションの後同じメンバー・同じ探索者・KPCでエモクロアの『ロールシャッハシンドローム』も回っています。こちらはこちらでこのセッションを受けてのRPが出来て、とても楽しかったですね。シナリオの内容も短いながら非常に面白く、わくわくしながら回らせていただきました。

 あとは……昨今どうにも涙もろくなってきたようで、今年何度かシナリオ中にガチ泣きをしてしまうことがあったのですが、このシナリオもそのうちの1回です。これ以外にもあと3回くらいある。

 本シナリオを回ったのは「高蝶 小夢(たかちょう こゆめ)」という探索者。ちょっと危なっかしいところが見え隠れする、消防士の女性です。先述のとおりこの探索者も「印象的な自探索者編」で紹介します。

 

6.輾転と町は / ごくつぶし

booth.pm

傾向:探索型・ホラー・短時間

軽度のHO有

人数:1人〜3人(今回は2人)

通過時期:7月

自探索者:藤ノ瀬 幟

<あらすじ>

 今日も、いつも通りの日常だった。

 いつも通り仕事をし、いつも通りの電車に乗り、いつも通り同僚と話し。

 そんな日常を穿ったのは、旧友からの一本の電話だった。

☆こんな人におすすめ!

背筋が冷えるようなホラーシナリオがやりたい!

穏やかでどこか不気味なシナリオをやりたい!

・好奇心のままに噂話の謎に迫っていきたい

 

 数多のホラーシナリオを書くことで知られる、ごくつぶし様の作品。

 「夏だし直球なホラーシナリオやろうぜ!」という『カタシロ』KPの提案で回らせていただきました。

 今回の相方は、『足跡と残り香』作者のHi-Runeと同じ身内鯖でいつも遊んでいる奴です。彼とはHi-RuneがKPをやるときに一緒に同卓をしたことがあるんですが、卓を囲んだ回数の割に神話的知識に妙に詳しいし、探索者は一癖も二癖もある男性探索者が多いしと、なかなか面白い奴です。

 今回も前々から「筋肉連れてくから!」と言っており、ホラーシナリオで筋肉…?と思っていましたが、「見た目からして筋肉馬鹿で、その言動から近所のジムで“妖精さん”扱いされているが、気配りもできて真面目な男」という、数段面白い奴が飛んできて笑いました。始まってみれば幼馴染という設定にした僕の探索者と妙に相性がよかったのも面白ポイントですね。RP中心のシナリオではなかったのですが、他のうちよそシナリオばりにたくさんRPができてよかったです。

 そんな幼馴染の自探索者は「藤ノ瀬 幟(ふじのせ のぼり)」というオカルト好きの歴史小説家。こちらも「印象的な自探索者編」で紹介します。

 シナリオの方もtheホラーという感じで、短いながらも非常に面白いシナリオでした。はっきり怖い!というよりはじわじわ怖い系で、好奇心と引き際の見極めも重要になってくるので、ハラハラしながら回ってました。

 KPもいつも通り穏やかな口調ながら、どこか不穏さも漂う声色なのがとてもよかったです。探索者同士の茶番にも積極的に乗っかっていただいてありがとうございました。

 

7.実験体δは青に微笑む / 霧島ジャック

booth.pm

傾向:探索型・SF・軽度のホラー

軽度のHO有

人数:1人〜2人(今回は4人)

通過時期:8月

自探索者:巨銀谷 月灯

<あらすじ>

 時は2015年。灰丘町に住む探索者達は、とある実験に参加することになった。

 話によれば、簡単な実験をするだけで高額の報酬をもらえるらしく。

 実験の内容は“非実在存在「魂」の証明”ということのようなのだが……。

☆こんな人におすすめ!

・やむにやまれぬ事情でお金が欲しい

魂というものに興味がある!

魅力的なNPCとわいわいしたい!

 

 『静なるテロリスタ』『ディープブルーにきらめいて』などで知られる、霧島ジャック様の作品。

 「シナリオ未通過かつこの卓最強のメンバー」と題して、KPをやる『ぐども』KPから呼んでいただきました。とってもありがたい話。

 そんな“最強メンバー”は、『ペトロイコル』で研究者のPLをやった方と、初同卓のふたり。おふたりはそれぞれ自分がKPをした『海綴じ』や『新約・八尺さま』を回っていただいたり以前から何度かお話したりしていたのですが、今回初めてのPL同士ということでわくわくでした。それにプラスしてサプライズで『カタシロ』KPがSKPとして参戦。キーパリング/RP双方の強者が集いまさに“大怪獣バトル”の様相を呈していました

 喫茶店のマスター、その喫茶店に通う男性が苦手な女子大生、親の癌治療の方策を探す薬学部生、その子の後輩で難病の投薬治療を目指す女子大生、と探索者作成の段階から探索者同士のつながりの有無とか設定の相談とかさせていただき、始まってからも探索者同士、NPCと探索者でバチバチRPしまくって盛り上がったセッションとなりました。多人数クトゥルフの楽しいところをたくさん摂取出来て楽しかったですね。

 SF(スペース・サイエンス双方で)を軸に、ところどころホラー描写もあり、クトゥルフ神話らしさも時折覗く、探索型のシナリオとなります。

 このシナリオの魅力はシナリオ内容もさることながら、シナリオで一番関わるNPCがめちゃくちゃ魅力的!今年回ったシナリオの中で『海綴じ』『こげぬ』『明晰夢』のNPCと並んで個人的には今年の『NPC四天王』だと思っています。NPCを演じたSKPの演技もめちゃクソよかった。

 探索者は薬学部に所属する女子大生「巨銀谷 月灯(こがねや あかり)」。こちらも「印象的な自探索者編」で紹介しますが、鬼ほど性癖を詰め込んだ探索者となっております。

 

8.辜月のN / 大点(INU

booth.pm

傾向:探索型・京都・高ロスト

秘匿HO方式

人数:2人固定

通過時期:8月(『実験体δ』の翌日)

自探索者:浜綿 夕梨花

<あらすじ>

 今日は啓都大学の学園祭“辜月祭”。

 探索者達は一風変わった出店を回りながら祭りを楽しんでいた。

 しかし、祭りも終わりに近づく頃、一本の電話がかかってくる。

☆こんな人におすすめ!

紅葉溢れる秋の京都TRPGで満喫したい!

どうしようもないくらいうちよそで狂いたい

一世一代のダイスで運命に身を任せてみたい!

 

 今年最もPLとして“狂った”シナリオは、といわれたら、間違いなくこれでしょう。

『漂泛』シリーズで知られる、サークル『大点書店』の大点(INU)様の作品。通称『こげぬ』。

 『実験体δ』で薬学部生をやった方が、「KPをやってみたいので参加者を募集したい」とのことで回らせていただきました。

 相方となるのは『ぐども』KP。PL同士で同卓するのは『ペトロイコル』以来ですね。親友という設定だったのでふたりで相談しながら探索者をねりねりさせてもらいました。この回だけではないですが、PL同士で探索者の設定相談するのめちゃくちゃ楽しいんですよね。面白い設定はどんどん湧いてくるし、解像度が始まる前から高まるしいいことしかありません

 できた探索者が「浜綿 夕梨花(はまわた ゆりか)」。自分を変えたくて大学デビューした演劇学部演技専攻の女子大生です。これはまた「印象的な自探索者編」にて。相方の子は同じ演劇学部で演技専攻を目指していたものの、とある都合で退かざるを得なくなり、舞台技術専攻へ転向した女子大生。

 『ぐども』以来の秘匿×バディシナリオだったのですが、本セッションは後述の『明晰夢にて』と同じくらい今年一番うちよそしまくったシナリオだと思います。一貫して親友であった中でも、セッションを通じて相手への感情に少しずつ変化があってとても味わい深かったです。また、表面上はいつも通りの仲良しコンビに見えても、心の中で微妙な気持ちのすれ違いやずれがあったことが終わった後の感想でわかって、もどかしい一方で嬉しい気持ちもあり、思わずうわ〜〜〜〜!!って声が出ました。TRPGでなかなかこういうすれ違いが生まれる瞬間ってないので、本当に良いバディだったと思います。

 KPも回すテンポ感、細かいところの気の利かせ方、NPCのRP、どれをとっても素敵でした。KPは初めて、と本人は仰っていたのですが、あれ多分嘘です。二桁三桁回やってないとあの手慣れ具合は絶対に出ない、ってくらい安心して回ることができました。多種多様なNPCたちを魅力的に演じてくださったのも、このセッションが心に残った理由のひとつだと間違いなく思います。

 シナリオの中身も本当に、もう本当に最高でした。PLに探索させるための“押し”の動機の焚き付け方も丁寧だし、高ロストというだけあって難易度感も容赦ないですし、何より終わった後の達成感は3年半いろいろ回ってきた中で一番あったと思います。皆さんはダイスを振るときに呼吸が苦しくなったことや終わった後ガチ泣きしたことがありますか?俺はある。

 あまりにもシナリオに狂いすぎて、完走後シナリオの日付に合わせて3人で本当に京都に行ってしまったくらいです。辜月祭もとい11月祭に行って、舞台となった場所をいろいろ巡って、探索者やNPCの名前にしてボルテでロカマチして、『カタシロ』KPとも初エンカして、最高の3日間を送らせていただきました。卓の皆さま、同卓してくれたおふたり、こんな素敵な方々に引き合わせてくれた『カタシロ』KPに、感謝。

 

9.明晰夢にて / あお

booth.pm

傾向:ファンタジー寄り・RP中心・特殊設定有

軽度のHO有

人数:2人固定

通過時期:8月

自探索者:越智 雪海

<あらすじ>

 気が付くと、見覚えのない異世界に迷い込んでいた。

 発見者である少年が言うには、ここは「夢の世界」で、自分たちは仲良しだったらしい。

 いまいち腑に落ちないが、とりあえず夢の世界とやらを探索してみることにした。

☆こんな人におすすめ!

・なんでも叶う夢の世界に行ってみたい

・何かと対照的なふたりのうちよそがしたい!

・危険を冒してでも大切な人のために役立ちたい

 

 『こげぬ』を通過後、勢いのままに同じメンバーでKP-PLの組み合わせを変えよう!ということで行われたセッション。KPは『ぐども』KPで、相方は『こげぬ』KPです。

 現実が好きで夢が嫌い/夢が好きで現実が嫌い、とHOの内容的に対照的なふたりということで、PL同士で相談して設定を詰めました。お互いにどういう探索者にします?と聞きあいながら詰めていった結果、ふたりとも現実/夢にしがみつきたい理由となるかなり重たい過去を持った対照的な性格のキャラシが出来上がりました。『こげぬ』といい、このメンツでやるとキャラシ作成時点での火力と解像度がえぐいことになりがち。

 ということで探索者は「越智 雪海(おち ゆきみ)」です。この探索者も「印象的な自探索者編」で。相方は、昔真面目だったけど、親やクラスメイトからに責められ続けた結果、大学生になった瞬間反動で吹っ切れた女の子。パ○活を日常的に行っているそうです。

 このシナリオは相方だけでなくNPCとの絡みも多いので、『ぐども』や『δ』の時よりもRPの比重が高くなったことで、KPの方の高いRP力が前面に押し出されていたセッションでした。時に笑いあい、時にぶつかり合い、時に悩みあい。本当に何かの映像作品のようなやり取りが繰り広げられてとても楽しかったです。セッション中にNPCが相方と言い合いになるシーンがあったのですが、怒り方があまりに鬼気迫っていて雪海がコミュニケーション下手なのも相まって割って入ることすらできませんでした。

 相方も相方でRPがすごかった。言い合いになるシーンもそうでしたが、めちゃくちゃ重い過去を背負っているとは思えない明るく元気なキャラで、雪海のことをガンガン引っ張ってくれました。

 だからこそ、対照的に発狂したときのRPがリアルに怖かった。任意で選んでもらうタイプの短期発狂で、彼女が選んだのは「過去のトラウマを思い出して反響言語を行う」。本当に丁寧すぎるくらい反響言語をすると会話って成り立たないんだってことを学びました。あまりの怖さにKPに助けを求め、NPCの助言を基に普段絶対しないであろう「水をかける」行動をとりました。

 そんな感じで、『こげぬ』に続きめちゃくちゃ濃密なRP中心のセッションを行うことができました。この後この3人のまだ回してない組み合わせで回したのが『海も枯れるまで』というわけです。どのセッションも本当に濃くて、良くて、最高すぎました。今後もこの3人で回す・回る予定のシナリオがたくさんあるので楽しみですね。

 

10.三つ子の魂 / しゅっしー

傾向:探索型・育児・謎解き

人数:3人〜4人(今回は3人)

通過時期:10月

自探索者:柏比・エルシア・唯香

<あらすじ>

 探索者達は、数日出張に出る母親に代わり子供の世話を依頼された。

 子供たちは、十歳ほどのかわいらしい三つ子の女の子。

 でも彼女たちは放っておくと危険なことばかり!なんとか無傷でお母さんに返さなきゃ!

☆こんな人におすすめ!

小さい子の世話を自探索者にさせたい

・ちょっとした謎解きをTRPG中にしたい

・街に潜む不思議な宗教の謎に迫りたい

 

 最後に紹介するのは、我らが大学卓のシナリオライター、しゅっしーによるオリジナルシナリオです。そういえば大学卓メンツの名前を出すのは彼が初めてですね。3年前の記事で紹介した、『小さな君〜』『赤と青の約束』『近くのヤブより遠くの……』など、多くの面白シナリオを生み出してきたライターです

 そんな彼の新作はなんと小さい子のお世話。探索者は三廻部さんという友人の女性から依頼を受けて彼女の3人の娘の世話を3日間することになります。

 回ったメイツは大学卓からひとり、高校卓からひとりの計3人。各々尖った傾向のあるPLで形成されたメンツでした。かつてのノリが戻ってきたようでとても楽しかったですね。荒ぶるダイスあり、無茶な行動あり、支離滅裂な言動ありと、とてもにぎやかでした。

 一方でシナリオは肉厚で少し重力を感じる雰囲気。最初は楽しいお世話だったはずが、徐々に不穏な雰囲気を帯びていきます。やはりこういうところの展開の見せ方が彼は上手いですね。探索やRP要素だけでもなく謎解き要素みたいのもあって、各々の要素が上手く絡み合ってひとつのシナリオになっているのがすごいです。

 こちらから出した探索者はストリートマジシャンを趣味でやっている女子大生、「柏比・エルシア・唯香(かしび ー ゆいか)」。なんとTRPGを始めてからの記念すべき最初の探索者です。使ったのは実に3年半ぶり。懐かしい気持ちになりながら当時とあまり手癖が変わらないことに苦笑いしてました。

 どうやらこのシナリオ、どこかで本にして出したいと本人から聞いているので、他の卓の方も出版されたら回しますのでぜひやりましょう。

 

 ということで、長くなりましたが以上10本、紹介させていただきました。

 こう振り返ってみると本当に色々なシナリオを回らせていただいたな、という感じです。あまりに幸せ者すぎる。

 「なゃんさんにぜひ回ってほしい!」というお声をいただいて回らせていただいたものもたくさんあって、本当にありがたいことだなとひしひしと感じました。

 来年もまだまだ回る予定のシナリオがたくさん控えているので、これからもたくさん楽しんでいこうと思います!

 

 それでは、「回ったシナリオ編」はここまで!

 最後は「印象に残った自探索者編」でお会いしましょう。

 

 それでは~。

*1:片方の方は『忘れじ』のPLでした