オタクの落書き帳

脳が働かない人間の戯言

【第2回】読んだライトノベルを振り返る【2021下半期編】

昨年7月くらいにやったネタを再び。前回はこちら↓

regioriodd.hatenablog.com

 前回同様備忘録レベルのものだし、今回は前回以上に雑だけど、昨年の下半期に読んだラノベの中でいくつかピックアップしていこうと思う。もう2月だけど。

 中にはちょっとレビューとして素っ気なさすぎるものもあるし、レビューのスタンスがものによってめちゃくちゃになっているんだけど、それは時間が経ってちゃんと覚えてない部分があるってのと何日かに分けて文章書いてるし推敲する体力も残っていないせいで、ということでご容赦を……。

 

1.賭博師は祈らない / 周藤蓮 イラスト:ニリツ

dengekibunko.jp

発行日:2017年3月~2019年1月

レーベル:電撃文庫

刊行巻数:全5巻

読んだ時期:だいたい7月くらい

 

<あらすじ>

 十八世紀末、ロンドン。
 賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。
 ――それは、奴隷の少女だった。
 喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。
 そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想いを通わせていくが……。
 やがて訪れるのは、二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。

 

【評価ポイント】

・匂いすぎるほどではない程度の近世の”退廃”感の表現

・作品の根幹を支える、手に汗握る臨場感溢れる賭博シーン

・”喋れないヒロイン”だからこそ出せる魅力を余すところなく見せつけている

 

現代舞台のラノベに飽きたやつ、絶対これはハマるぞ。

 ライトノベルで中世を模したファンタジー世界の話というものは多いものの、18世紀末というか近世を取り扱った作品は少ない、と思う。しかしてこの作品は、時代小説というよりは、いつも読む現代を舞台にしたラノベにも多い”ボーイ・ミーツ・ガール”的な小説といったほうがいい。

 華やかな中世に比べ、近世は暗く、退廃的なイメージが強い。この作品では、主人公ラザルスのどこか浮世離れした生き方も含め、時代の雰囲気を余すところなく味わうことができる。普通のラノベに飽きちゃった人ほど、おすすめの作品。

 作品名にもなっている”賭博師”の生活を支える賭博シーンも、しっかりと描写されており、作品の魅力の一つとなっている。(多少の脚色こそあるが)ブラックジャックやパイガオといった現存する賭博も、当時の時代考証に基づいたルールで展開されるため、作品の没入感を高める一助となっている。また、ゲームの内外に戦略や盤外戦術が張り巡らされており、それによる心情の変化や行動もつぶさに描かれるため、読んでいるこちらとしても手に汗握ること間違いなしだろう。

 ただ、この作品はそこで終わりではない。そんなラザルスも、奴隷の少女リーラと出会い、そしてそこからの展開によって彼の考えについて”変化”が起こっていく様子は、”登場人物の心情の変化”を強く描いていくラノベならではの醍醐味だろう。

 ”喋れないヒロイン”というのもなかなか他にはない設定だ。登場人物のイメージを掴むために会話の依存度が高いライトノベルというメディアで”喋れない”というのは、非常に大きなデバフとなり得るのだが、作者はその中でもリーラを魅力的に書くことに成功している。心情が見えづらくミステリアスであるがどこかほっとけないこの少女の可憐さ、そして直向きさに、読み終わった読者各位はきっと惹かれることだろう。

 同じ作者で20世紀前半、第1次世界対戦後の禁酒法時代を舞台にした「吸血鬼に天国はない」という作品もあるが、こちらはこちらで大変面白い。捨鉢な性格の主人公が吸血鬼の少女と出会うことで自らの生きる意味、そして愛について二人でともに考えていく作品だ。「賭博師」でも「愛とはなにか」というテーマがうっすら透けて見えるが、こちらのほうがよりわかりやすく追求しているのでそういう哲学的なのが好きな方はぜひ読むことをおすすめする。

 

2.推しが俺を好きかもしれない。 / 川田戯曲 イラスト:館田ダン

fantasiabunko.jp

発行日:2021年7月

レーベル:ファンタジア文庫

刊行巻数:続刊1巻

読んだ時期:7月

 

<あらすじ>

 クソみたいな現実でも、推しさえいれば生きていける。
 俺の推しは、ネットで人気の音楽ユニット『満月の夜に咲きたい』のボーカル・U-Ka(ユーカ)だ。
 ある日、彼女の配信に映ったのは――学校一可愛い俺のクラスメイト、花房憂花(はなふさ ゆうか)だった。
 クラスメイトとはいえ、推しのプライベートにオタクが干渉しちゃ駄目だ!
 なのに、なぜか花房は俺に近づいてきて!?
「ちょくちょく、遊びに来るから」
 立場を超えた交流が始まり、俺一人だけだった放課後の部室が、推しと二人の空間になっていく。
 俺しか知らない推しの一面がだんだんと増えていき――
 人気ボーカルと、陰キャオタク。格差があった二人が近づく、両片想い青春ラブコメ

 

【評価ポイント】

・これでもかというほど味わえる、ヒロイン”花房憂花”の魅力

・短編で展開される何気ない日常の積み重ねによって生まれるキャラクターとしての”厚み”

・”ネット上の人気ボーカル”と”1ファンでしかないオタク”という隔絶とそれに対する主人公の面倒臭さが生み出すもどかしさ

 

 

平成と令和の良さが合体した新時代ラブコメ今期最押し。

 前回記事で紹介した「嘘嘘嘘、でも愛してる」の川田戯曲先生の最新作。通称「推し好き」。

 ライトノベルでラブコメといえば、王道の一つであり、最近とみに人気のあるジャンル。ライトノベル市場全体で見ても、ラブコメの占める割合は日に日に大きくなっている。

 ラブコメは「主人公と誰かが結ばれる」ということが共通のゴールである(結ばれてから始まるものもあるが、その場合はより絆を深めたり、最終的に生涯の伴侶となったりすることが多いだろう)以上、シナリオの展開というよりはキャラクターの魅力に依存する部分が多く、「いかにして読み手が惹かれる、感情移入できるキャラクターを描けるか」というのがポイントとなる。

 その点で言えば、この作品は「登場人物が少ない」という特徴を生かし、1話数ページから10ページ程度で描かれる日常の積み重ねから詳細にそれぞれのキャラクターを描いているので、読み進めていくにつれキャラクター像が厚くなっていき、読み終わったときにはそのキャラクターが読者の中で確かな形として残っていくのが強みだ。

 この作品に出てくる主要なキャラクターは僅か2人。”俺”くんこと夜宮光介と、ヒロインの”U-Ka”こと花房憂花だけだ。それ故に、読者はこの2人にだけ集中することができ、キャラクターの魅力を存分に堪能することができるのだ。

 しかもこの花房憂花という少女もなかなか尖っている。普段は明るく振る舞い、歌で世界を魅了するネットとクラスの人気者。しかしその実態はナルシストで腹黒な猫かぶり系破天荒ガール。オタクくんはこういうギャップに弱いんだよな?という急所を正確についてくるのが実にいやらしい。人によっては花房のウザさにげんなりするかもしれないが、それがまた魅力なのだ。腹黒?だがそれがいい!という諸兄は間違いなく読んだほうがいい。

 主人公の夜宮くんもなかなかに振り切った、いわゆる”めんどくさい”タイプのオタクくんだ。「たかだか1ファンの俺が、あんな腹黒女だとしても推しである人気ボーカルのU-Kaに手を出していいわけがない」と迷わず言い切れるほどには愚直かつ硬派なオタクである。ぶっちゃけめっちゃ好感持てる。しかし対照的に、いわゆる「オタクくんって、自分の好きなものになると急に早口になるよな笑」の典型的なタイプで、ブログでU-Kaに対しド長文の褒め褒め怪文書を垂れ流しているようで、U-Kaファンの間では熱狂的な考察オタクとして広く知られているほど、自分の好きに素直である。

 ラブコメと銘打ったからには、当然この二人がお互いのことを好きになるんやろなあ、というのは想像に難くないだろうが、お互いがお互いに抱く恋心をなんとなく気づいておきながら、それを認めないし、はっきりとは口にしない。いわゆる「両片思い」にギリギリ満たない状態で話はずっと進んでいく。それは本当に人気ボーカルとそのファンの関係だからなのか、それとも2人で過ごす幸せな関係性が壊れてしまうことへの不安から生まれてくる葛藤故なのか。そのもどかしさも、この作品を構成する重要な要素の一つだ。恋する女の子は、かわいい。

 ラノベ全体の雰囲気としては、「ボカロPと歌い手で構成されたネットの人気音楽ユニット」というYOASOBIやずとまよ、ヨルシカみたいな現代的要素を取り入れてはいるものの、文体や登場人物の尖り具合、作中で出てくるネタなどからもどこかゼロ年代後半から10年代前半を彷彿とさせるような懐かしさを覚えるものとなっている。恐らく作者の川田先生は僕らと同じかそれよりちょっと上くらいの世代で、自分が読んでいた頃のライトノベルの雰囲気をそのまま生かしているのだと思う。そのため、昔からライトノベルを読んでいた人にとっては実家のような安心感が感じ取れるのもこの作品の魅力の一つだろう。「両片思い」という令和のラブコメにおけるトレンドも取り込みつつ、平成の残り香も感じられる、まさに「ネオ・ラブコメ」と言える。

 ちなみに、

なんと続刊の発売が決定しております!!!!!!!えっそうなんですかよっしゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!マジで3億年待ってた

 この作品、結構世間的に人気があったようで、今年の「このラノ」なんかではランキングこそ漏れたもののラノベ評論家のみなさんがこれの名前を挙げててすんごいニンマリしてました。やっぱりちゃんとしたオタクは素敵な作品をちゃんと見ててくれるんですよね。マジで続刊が出るとは思っていなかった。本当に嬉しい……ありがとう……。

 発売日は3月19日。これを機に読んでハマった方は是非買いましょう。そして語りましょう。対戦よろしくおねがいします。

 

3.処刑少女の生きる道(ヴァージンロード) / 佐藤真登 イラスト:ニリツ

ga.sbcr.jp

発行日:2019年7月

レーベル:GA文庫

刊行巻数:続刊6巻

読んだ時期:8月、9月

 

<あらすじ>

 この世界には、異世界の日本から『迷い人』がやってくる。だが、過去に迷い人の暴走が原因で世界的な大災害が起きたため、彼らは見つけ次第『処刑人』が殺す必要があった。
 そんななか、処刑人のメノウは、迷い人の少女アカリと出会う。躊躇なく冷徹に任務を遂行するメノウ。しかし、確実に殺したはずのアカリは、なぜか平然と復活してしまう。途方にくれたメノウは、不死身のアカリを殺しきる方法を探すため、彼女を騙してともに旅立つのだが……
「メノウちゃーん。行こ!」
「……はいはい。わかったわよ」
 妙に懐いてくるアカリを前に、メノウの心は少しずつ揺らぎはじめる。
 ――これは、彼女が彼女を殺すための物語。

 

【評価ポイント】

・7年ぶりの大賞受賞の名に恥じぬ、王道かつ壮大で重厚なストーリー

異世界無双のアンチテーゼとも言える、”純粋概念”の設定

・重すぎず軽すぎない程度の"百合重力"

 

異世界もの✕百合✕ファンタジー=最強。

 「異世界もの」はラノベの人気ジャンルとなって久しいが、この作品は異世界もの」でありながら、「異世界もので触れたがらない要素」を多く取り入れている新鮮さがまず目につく。

 1つ目は、「視点」だ。異世界もの、とりわけ転生や召喚系の多くは「異世界に召喚(転生)する側」からの一人称視点による作品が占めている。しかしこの作品はその逆で、どちらかというと「異世界側」、しかも三人称視点が殆どとなっている。異世界側に寄った客観的な視点から描かれる『迷い人』の姿は、かなり浮いた存在として見えることだろう。

 2つ目は、「能力の代償」。無双することが多い「異世界もの」において、余計な制約は主人公の活躍の幅を狭めることに繋がるとして嫌われる傾向がある。作品によっては勿論制約があるものもあるが、この作品は「特定の条件でないと使えない」どころの話ではない。

 異世界に召喚された『迷い人』は召喚時に《純粋概念》と呼ばれる力を手にすることになっており、この力はその概念に関わる力を操ることができる。まさしくチートばりの能力であり、中には《無》や《時》といった強力すぎるほどの概念も存在する。しかし、これらの《概念》には「能力を使いすぎると能力の《概念》そのものに自己を食われてしまう」というとんでもない代償がある。自己を完全に食われた『迷い人』は《人災》(ヒューマンエラー)となり、その強力な概念を概念のもつ指向性のままに振るい世界に甚大な被害を及ぼすと言われている。主人公の1人たるメノウは、《人災》となることを防ぐため、「処刑人」として召喚された『迷い人』を暗殺する役目を負っているのである。

 そんな重々しい設定を背負っている世界で、メノウと『迷い人』であるアカリが待ち受ける運命を乗り越えていく、というのがこの作品の概要だ。

 そして、この作品にはもう1つ、大きな特徴がある。それが、程よい重力で提供される百合要素だ。メノウとアカリの関係性は最初は「暗殺する側と暗殺される側」というシンプルな関係性であり、何故かアカリは暗殺する当事者であるメノウに対してはじめからそれなりの好意をもって接しているところからスタートするのだが、この関係性は旅をするにつれて徐々に質量を帯びてくる。アカリがどうしてメノウに対してこんなにも信頼を抱いているのか。そして、ただの暗殺対象であったアカリがメノウにとって大事な存在になっていく様は、まさにガールズラブの文脈そのものだ。素晴らしい……。

 ただの「異世界もの」だけでなく「百合もの」としても楽しめるこの作品は、現在6巻まで発売されており、ここで一段落となっている。新章開始前という絶好のタイミング、読み始めるなら間違いなく今だろう。

 

ちなみにこちらは、

virgin-road.com

来季アニメ放映となっております。

メノウ役はあのいちかもといNU-KO佐伯伊織さんです。PVも公開されておりますので、ぜひ見てください。某作品と違って、これは当たると信じて疑っていません。頼むぞ……。頼むぞ~~~~~~~~~~~~~。

 

4.りゅうおうのおしごと! / 白鳥士郎 イラスト:しらび

ga.sbcr.jp

発行日:2015年9月

レーベル:GA文庫

刊行巻数:続刊16巻

読んだ時期:10月~

 

<あらすじ>

 竜王(将棋界最高位)の家にやってきたのはJS(女子小学生)の押しかけ弟子だった!?

 玄関を開けると、JSがいた――
「やくそくどおり、弟子にしてもらいにきました! 」
 16歳にして将棋界の最強タイトル保持者『竜王』となった九頭竜八一の自宅に押しかけてきたのは、小学三年生の雛鶴あい。きゅうさい。
「え?……弟子?え?」
「……おぼえてません?」
 憶えてなかったが始まってしまったJSとの同居生活。ストレートなあいの情熱に、八一も失いかけていた熱いモノを取り戻していく――

 『のうりん』の白鳥士郎最新作! 監修に関西若手棋士ユニット『西遊棋』を迎え最強の布陣で贈るガチ将棋押しかけ内弟子コメディ、今世紀最強の熱さでこれより対局開始!!

 

【評価ポイント】

・刊行開始から7年経った今もなお色褪せない、王道かつ熱い展開

・対局室の雰囲気が本を通して伝わるほどの手に汗握る一進一退の攻防

ラノベらしいラブコメも手厚くフォロー

 

今からでも遅くない。年をとると忘れがちな熱さ、取り戻さないか。

 アニメ化もされ、ラノベを読んでる人で知らない人のほうが少ないのではないかと言われるほどの名作。これはもう多くを語る必要はないだろう。

 この作品は作者の白鳥先生が趣味としている将棋をテーマにしており、制作に当たり若手棋士を迎えていることもあり、将棋作品としての質が担保されている。残念ながら自分は将棋についてはさほど明るくないため、具体的にどう担保されているかまでは述べることはできないのが悔やまれる。

 この作品の面白さはもちろんそれだけではない。のうりん』で魅せた実力はこの作品でも健在であり、エンタメとしても秀逸。対局中1手ごとに大きく移り変わる心情の動きや雰囲気の描写は、王道ながらも読者を熱くさせるための良いエッセンスとなっている。

 何よりも、この作品は将棋を軸としたドキュメンタリー要素を兼ね備えている。ただ主人公の八一やその周りのヒロインたちの苦難や葛藤を描くだけではなく、彼らが当たることになる対戦相手の抱える事情や心情までつぶさに、そして「主観的に」描写してくれる。将棋というゲームの魅力に取り憑かれながらも、容赦なく襲いかかってくる将棋界の厳しさに押し潰されそうになりながらそれでも抗おうとする棋士たちの姿は、他のラノベとは明らかに一線を画す大スペクタクルとして我々読者の目に映るだろう。

 また、ラブコメやギャグ展開も充実しており、八一のロリコンクズ鈍感最低ムーブとそこから派生するベタベタの展開は、殺伐とした世界観で描かれる将棋界とのよいコントラストとなり、少し古臭さを残しながらも淡い青春時代を逃した我々を癒やしてくれる存在となるだろう。

 自分は現在9巻まで読了しており、八一がスランプを超え現実に負けないようにするためか恐ろしい速度でインフレしている描写が見られるようになり、銀子と八一のラブコメ具合がい~い感じになってきたくらいまで来た。1巻からずっと銀子に漂っていた負けヒロイン感はここ数巻でかなり鳴りを潜め、正ヒロインとしての余裕を得てきた節があるので、ここで1個大きい事件でも起きて一気にお近づきになっていただきたいところである。

 あ、アニメも勿論見ます。その前にお供にしているゲーム(異常運動遊戯)をちゃんとやらないといけないんですけどね…1ヶ月サボってませんか?ちゃんとやろうね

 

5.サキュバスニート~やらないふたり~ / 有象利路 イラスト:猫屋敷ぷしお

dengekibunko.jp

発行日:2021年11月

レーベル:電撃文庫

刊行巻数:続刊1巻

読んだ時期:11月

 

<あらすじ>

 サキュバス召喚に成功してしまった童貞かつニートの青年・和友。
『淫魔にエロいことをしてほしい』
 そんな直球過ぎる願望を抱いていた和友だったが、現れたのは一切いうこと聞かない凶暴でワガママなジャージ女。 スケベなことには興味ナシなこの駄淫魔は、あまつさえ和友の部屋に住みつき、食う寝る遊ぶを享受するだけの居候と化してしまい……?

「どうにかしてお前に俺の『願い』を叶えさせるからな」
「やれるものならやってみれば~?」
「それまでの間、お前はここに置いておくだけだ。勘違いするなよ」
「お世話になりま~す」

 絶対に淫魔に搾られたい人間、和友。絶対に人間を搾りたくない淫魔、イン子。相反する二人の、奇妙な共同生活は、こうして幕を開けた――

 

【評価ポイント】

・徹底的に振り切ったギャグ展開

・超ハイテンポで繰り広げられる、目まぐるしくも愛おしく感じる掛け合い

・人間関係においてどこか不器用で魅力的なキャラクター達

 

オタクに優しいサキュバスは存在する、のか…?

 ここからは2本、下半期中の新作を。その1つ目がこちら。

 もう既にタイトルやあらすじからしていかにもオタクが好きそうな感じなのだが、お察しの通りこの作品は超がつくほどのギャグ作品である。念の為先に釘を差しておくが、サキュバスが出てくるくせに1ミリたりともラブい展開にもえっちな展開にもなる可能性はない。残念だね。

 とはいえ、ギャグ作品というのは難しいもので、少しでもギャグの中に陰りが見えたり重い雰囲気が出てきたりすると一気に笑えなくなってしまうのだ。これは一種の同情というか哀れみのようなもので、一度それを感じてしまうとその部分にばかり目がいってしまい、ギャグ作品としての面白さが激減してしまう。その点においてこの作品は徹底してギャグに振り切れていながらも、最終的に主人公達の抱えている状況の改善・解決に落とし込むように構成されている。『このすば』のような作品が好きな読者には、非常におすすめできる作品といえる。

 ただ、ギャグが濃すぎて惑わされがちだが、この作品の初期状態はギャグ作品にしてはかなり危うい状態からスタートしている。主人公の和友は母親と二人暮らしでニート、母親は働きに出ていながらも弱音を吐かずニートの和友にも優しく接している、つまりかなり無理をしており、一歩間違えれば母親が倒れ家庭崩壊も已む無しといった状況である。そんな中現れたサキュバス、イン子がどんなことをしでかし、彼女の存在で彼女の周囲がどう変わっていくのか、ぜひ読んで見届けていただきたい。彼ら以外にも個性豊かなメンバーが話を彩り、盛り上げていくのを見て、あなたもきっと読み終わる頃にはすっとした気持ちになれること間違いなしだろう。

 あと!!前回も言ったけど!!!ぷしお先生のイラストアドがクソデカいので!!!!そこもよろしくおねがいします!!!!!

 

6.こんな可愛い許嫁がいるのに、他の子が好きなの? / ミサキナギ イラスト:黒兎ゆう

dengekibunko.jp

発行日:2021年11月

レーベル:電撃文庫

刊行巻数:続刊1巻

読んだ時期:11月

 

<あらすじ>

 貧乏で日々バイトに勤しむ高校生・幸太の前に突如現れた、婚約者を名乗る超セレブ美少女・クリス。聞けば10年前、金に目がくらんだ幸太の父が勝手に縁談をまとめていたらしい。
 親の言いなりにはならない! と意気投合した二人は《婚約解消同盟》を結成することに。だが、これは初恋相手の幸太を振り向かせようとするクリスの策略であった――!!
「コータは他の婚約者がいると嘘をつくの。じゃあまず、好きな人を作るところからね♪」
「待て待て。必要ない。俺は今のカノジョにプロポーズする!」
「……はああっ!? カノジョ――!?」
 婚約解消から始まる三角関係!? 元許嫁、クリスの下剋上が幕を開ける――! 

 

【評価ポイント】

・大胆ながらもちょっと抜けてるクリスの魅力が丁寧に描写

・鈍感不器用ムーブしかせん主人公の裏でバチバチに白熱するヒロインレース

・次巻以降があれば氷雨をもっと掘り下げてほしい

 

日本人の精神性は、負けヒロインに適合している。

 下半期新作2本目。下半期っていうか同じ月に2本買ったんですけど…。

 元々表紙イラストをTwitterで見て興味持って買った、所謂「ジャケ買いラノベ

 見ての通り、作風としてはキャラで勝負するタイプのラブコメ。ラブコメとしては珍しく、主人公に最初から彼女がいるのだが、そこに「親が決めた」という許嫁が現れたことにより、仁義なきヒロインレースが幕を開ける…!という内容。

 メインとなるヒロインは現彼女・氷雨と自称許嫁・クリスの2人だが、続刊を見込んでいるのか、この1冊で掘り下げられていたのはクリスだけである。まるごと触れられている分、彼女の魅力が丁寧に描かれているのは高評価。傲岸不遜、大胆不敵を地でゆく彼女は、彼女持ちの主人公・幸太に振り向いてもらいたいがために、《婚約破棄同盟》という建前を用いて、自分の有り余る美貌と財力を駆使し、あの手この手で幸太に接近する。まあ幸太くんが致命的にバ…にぶにぶな熱血キャラであるが故、だいたいうまくいかないんですけど……。

 ただ、彼女の魅力が掘り下げられていくのが中心であるがゆえに、現彼女である氷雨についてあまり掘り下げられておらず、ヒロインレースのバランスとしてはやや不平等なので、次巻以降があるのであれば、ぜひ氷雨を中心に触れてほしいところである。彼女のくせに1冊読んでわかることがとりあえず氷雨が幸太くんのことめちゃくちゃ好きで許嫁であるということしかわからないってどういうことよ

 

 ここまで6冊、この下半期に読んだ本をざっと紹介した。

 これ以外にも前回紹介した本の続刊などを読んだので、覚えている限り羅列しておく。

・スパイ教室 2~6巻

・探偵はもう、死んでいる。 6巻

・優雅な歌声が最高の復讐である おすすめ

・吸血鬼に天国はない 1~4巻

・教え子に脅迫されるのは犯罪ですか? 1~2巻

青春ブタ野郎シリーズ 6~8巻

おまけ ダークギャザリング 1~8巻 おすすめ

 見ればみるほどラノベしか読まないやつで、すみません…。

 紹介はしなかったが、個人的に優雅な歌声~はめちゃくちゃ面白かった。ヒロイン瑠子の性格が無茶苦茶好みだったのと、爽快感のある終わり方が大変好印象で、読み切り作品なのがもったいないくらいだった。本当は見出し立てて紹介したいくらいだったんだけど、もう1個どうしても紹介しなきゃいけないやつがあるから諦めた。あともう紹介できるほどの体力が残っていなかった。

 

7.さいごに

 さて、ここまで紹介したが、最後にもう1個だけ取り上げておかなければならないものがある。

 原作を読んで一時期がっつりハマっていた身として、これには触れておかないわけにはいかない。

 そう、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7.探偵はもう、死んでいる。 アニメ版

tanmoshi-anime.jp

放送期間:2021年7月~9月

放送話数:12話

見た時期:2021年7月、12月~2022年1月

 

【評価ポイント】

・時系列の順番を原作と変えているせいで展開が急になりすぎ、視聴者が追いつけていない

・原作も大概だが、それ以上に現在組がほっぽかれてしまうので、なんでいるの?みたいな感じになる 当然シエスタに人気が集中した

・アニメ化すべきじゃなかったですよね?

 

 おまたせしました。

 原作ファンたるもの、これを避けずに2021下半期を終わることはできない。

 第15回MF文庫Jライトノベル新人賞《最優秀賞》を受賞し、激熱展開と魅力的なキャラクター、ニコ動のコメントで「《物語》シリーズの劣化パクリ」と言われた軽妙な掛け合いが魅力の作品で、オンゲキにも関わっているしょうもねえ巨悪KADOKAWAのゴリ押しで刊行開始僅か1年かそこらでアニメ化まで漕ぎ着けた大人気ラノベである。原作のフォローのためにここで念押ししておくが、一応原作は本当に人気だし、ここ数年のこのラノでも上位だし、自分も好んで読むくらいにはそれなりに面白いラノベである。なんだけど、さぁ……。

 ということで、最後に「モサイアニメ」ことたんもしアニメの感想を以て、当記事を閉めようと思う。もう10,000文字超えてんだけど。

 

 まず結論から言うと、原作勢が擁護できないくらい本当に「しょうもなアニメ」だった。

 所謂「クソアニメ」というのは、作画が壊滅的な事になっていたり、中身がこのブログくらいスッカスカだったり、読者に到底理解できそうもない超展開の連続であったり、本来であれば視聴に堪えない内容であるにも関わらず、それが一周回って面白さに繋がり、みんなでゲラゲラ笑ってみるような一種のカルト的人気アニメになるのが特徴である。それはチャージマン研だったり、ダイナミックコードだったり、スマホ太郎だったりするわけだが、このアニメはそのどれもについて中途半端。端的に言えば、「ガチでコメントに困るくらいのどうしようもなさ」だった。

 まず、展開が全体的にのっぺりしている。この作品が面白くいられるのは、掛け合いや衝撃展開の連続で生まれる「疾走感」があるからなのだが、アニメ内では1、2巻の内容を無理やり1クールに引き伸ばしている(上に、1話は1時間尺をとっている)せいで、疾走感が皆無。延々と話が進まず、なにか作業をしながら~くらいじゃないとまともに見ていられない。この作品、元々会話が多めなためページ数に対して文字数が少なく、それ故にすらすら読めるというところもあったのだが、なぜそれを引き伸ばしてしまったのか……。個人的にはあのペースであれば《SPES》壊滅(5巻前半)まで描くことができたのではないか、と思う。Q.え、それくらい原作も中身が薄いってこと?A.はい。

 次に、読者が置いてけぼりになる要素があまりに多い。これはまあ原作の悪いところでもあるんだけど、まだ原作のほうが数億倍マシだ。何故なら「モノローグがある程度フォローしてくれているから」。君塚くんのモノローグで解説してくれているおかげで、ギリギリオタクは置いてかれていないのである。それってどうなのよ。

 で~す~が~(森一丁)、アニメ内には殆どと言っていいほど君塚くんのモノローグはない。アニメだからモノローグばっかり入れ込むのもアレだと思ったんでしょう。でも同系統の《物語》シリーズは成立してますよね?そのせいで、ただ視聴者の理解が全く追いつかんアニメと成り果ててしまった。時系列はじゃんじゃん飛ぶ、何の説明もなく超展開が続く、何か知らんうちに伏線回収されとる、もう訳がわからない。こんなのが新人賞最優秀?ラノベももう終わりだな…と思った方はそう少なくないんじゃないでしょうかね。ええ。

 あとこれは私怨も大いにあるが、夏凪達現在組があまりに放置されすぎてたので可哀想だった。一応原作では1巻はとりあえず現在組だけで構成されていたはずなので、夏凪達が放置されるなんてことはまったくなかった(2巻は過去編だから出てこないのは詮無きこと)。それなのに、アニメでは1巻と2巻の内容が適当に入り組んでいたせいで、夏凪達が4話くらいから1ヶ月以上にわたり全く触れられず放置で、忘れた頃にちょちょいと1巻ラストの方が回収されて終わり、という状況になっていた。そのせいか、アニメ視聴勢の間ではシエスタにしか人気がなかった。当たり前だよね。

 とまあ、言いたいことは他にもあるんだけど、今流行りの原作改悪に巻き込まれたたんもしくんは、哀れクソアニメへと成り果ててしまったのでした。お前の嘘、食ってやったぜ ただし味は… みたいな気分でした。マジで。

 こんな有様だったので、僕は視聴を2話でやめて半年放置し、それでも原作ファンとして見届けなければならないと思ったので、「リングフィットアドベンチャーをやりながら作業のお供として流せば完走できるのではないか?」というノーベル平和賞級の天才的発想を駆使して見事完走したわけなのでした。つらい物につらい物をかければつらくなくなるかな、って……。

 ああでも、評価できる点は2つありました。作画の高さと、夏凪役竹達彩奈さん及びヘル役花守ゆみりさんの演技力の高さです。ゆみり神~~~!!

 

 

 ということで、今回の記事はここまで。

 今年もラブコメにギャグにシリアスに、いいラノベと出会えることを祈りながら、この記事を終わろうと思う。長文失礼しました。

 

 

 

\ピンポーン/

? なんだろう、宅配便かな?

<久々の百合厨ソウル覚醒編もとい2022上半期編、またはわたなれ紹介記事に続く、かもしれない>