【Unagi-Network Advent Calendar 2023】2023年のクトゥルフ神話TRPGを振り返る① ~回したシナリオ編~
本記事はUnagi-Network Advent Calendar 2023 - Adventarの12月20日の記事になります。
他の記事をご覧になりたい場合は上のリンクか下の埋め込みからどうぞ。
ジャンルは本記事と全然違うのでご承知おきください。
また、本記事にはTRPG界隈でよく使われる専門用語が飛び交う記事となっております。
なるべくマニアックな単語を使わないようにするつもりですが、分からない単語等が発生した場合には、以下のサイトを片手に見ていただけると幸いです。
みなさ~ん!
TRPG、やってますか?
…………。
はい。
皆さん、こんにちは。なゃんです。
Unagi-Network Advent Calendar 2023、楽しんで読んでいらっしゃるでしょうか。
ということで、ミスターサブカルこと私、久々のアドベントカレンダーでの登場です。
技術系のアドベントカレンダーのはずでは!?と思ったそこのあなた。実はそうじゃないらしいです。オールジャンルです。
今回も誘いを受けたときに「ネタないよ(泣)」と言っていたのですが、「今年のTRPGまとめでも書いたら?」と発案を受けて「やっていいのか!?」と思いつつも書くことにしました。
そんなわけで、枠を3つも(勝手に)いただいていつも通りダラダラと文章を書かせていただきます。よろしくお願いします。
はじめに ーこの記事で書くことー
TRPGのまとめ記事を書くのも3年ぶりですね。なんだか久しぶりです。
これについてはブログそのものを書くのをサボっていたからというよりは、当時に比べてまとめるほどの頻度ではなくなっていたことが一番大きいと思います。
高校や大学の頃の友人たちは以前に比べて忙しそうでしたし、流行病も一時ほど色々言われなくなってきていたこともあって外に出る機会が戻ってきて、どちらかというと3年前が色々制限されてて特需が発生していた、と言ってもいいのかもしれません。
ただ今年は、有難いことに年始から新しいご縁に色々と恵まれまして、3年前、いやそれ以上にTRPGを遊ばせていただきました。
それに伴って以前遊んでいた方々とのTRPGも以前ほどではないですが少し頻度が戻り、終わってみればTRPGが日常の一部のようになった一年でした。
今回はそんな一年間での振り返りということで、
- キーパー(KP)として回したシナリオ
- プレイヤー(PL)として回ったシナリオ
- 思い入れが強い自作探索者
の3つの観点から振り返り及び紹介をしていこうかなと思います。
1つの記事にすると相当長くなってしまうので、それぞれの観点ごとで記事を分けて計3記事でお送りしていきます。
またシナリオの紹介では、簡単なあらすじやシナリオ概要も示すので、気になるシナリオを探している方はぜひ参考にしてみてください。
なお、紹介するシナリオについてはタイトルにもある通り、すべて「クトゥルフ神話TRPG(CoC)」となりますのでご了承ください。エモクロアとかもちょっとやったけどね。1072いいですよ。
もしお読みいただく場合は、それぞれの記事の間で休み休み読むことを推奨します。ほんと、まとめて読むと多分25,000字くらいの分量になってしまうと思うので……。
ということで、早速始めていきましょう。
まず本記事では、「回したシナリオ編」からお送りします。
- 0.KPとしての2023年
- 1.忘れじの理想郷・帰らじの理想郷 / ディズム
- 2.海綴じ / 結井ななきそ
- 3.Dの信仰 / みくろ
- 4.ドロップアウト・ディスパイア / 茶々丸
- 5.海も枯れるまで / ねこずし卓
0.KPとしての2023年
- 今年は、新しく入らせていただいた卓でお世話になったことが多く、これまでのオリジナルシナリオ中心だった頃から一転して、市販されているシナリオを回すことが多くなりました。元々オリジナルシナリオばかり回しているという環境がおかしかった説はあります。
- そんな環境の変化の中で、今年は自分がシナリオを持ってきて回すというよりは、「他の方が回りたいシナリオを回す」「自分が回ったシナリオを他の卓に回す」ということが多くなりました。僕の基本的なTRPGへのスタンスは昔と変わらず「KP/PLを問わず他の同卓者にいいものを提供したい」が常に優先なので、受けた機会をありがたく思いながら、色々と回させていただきました。立ち位置的には武器商人に近いです。いや、他の方が持ってきたシナリオで相撲をとってるからやってることは強盗やパクツイに近いか……。
- あとは、ひとつのシナリオを複数回回すことが増えましたね。多いものになると10回を越えるものもあります。また先述したように回ったシナリオを回すことが増えた関係で、ここで紹介するような「回した”だけ”のシナリオ」の数はそれほど多くありません。本記事では5作品(厳密には6作品)紹介しますが、正直言ってこれでほぼ全部という具合です。
それでは、そんな2023年はどのようなシナリオを回していたのか、ひとつずつ見ていくことにしましょう。
1.忘れじの理想郷・帰らじの理想郷 / ディズム
傾向:サイコホラー・ロールプレイ(RP)中心・NPC多
人数:3人固定
回した回数:忘れじ2回 帰らじ1回
ハンドアウト(HO)有
<あらすじ>
突発性自殺事件が多発するH県P市愛造町。
共通の友人を失った探索者たちは、その死の真相を探る。
☆こんな人にオススメ!☆
「推しが回るからその前に自分が通過しておきたい」という卓の方からの希望で回させていただいたシナリオです。
エンタメ集団(?)『驚天動地倶楽部』所属、クトゥルフ神話TRPGでは『カタシロ』で有名なディズム様の作品。『カタシロ』についてはまた改めて話をします。
小学生時代の友人を謎の自殺事件で失った探索者達が、その彼と親しかった友人からの誘いで、この死が本当に自殺だったのか、他の可能性がなかったのか、それを確かめに行く、という話です。
このシナリオの特徴は、「かつての同級生だった同卓探索者やNPCととにかく会話をすること」でしょう。
『カタシロ』もそうですが、この方のシナリオは結構対話型のシナリオが多いです。TRPGは会話で話が進行するゲームですからそれは当然なのですが、KPはKPというよりはNPCとして探索者達を導き、探索者達はそのNPCと会話することで情報を得ていく。
このシナリオも、そういう傾向が色濃く出ている作品です。
また、ここで2本紹介しているとおり、このシナリオは”キャンペーンシナリオ”と呼ばれるものです。特にこの作品は他のキャンペーンシナリオと違い「同PL・同探索者」で回っていただくことになります。
そのため、『忘れじ』を通して形成・変化した人間関係や他探索者に対する心情が、そのまま『帰らじ』でも影響する、というのがポイントです。
実際両方を回っていただいた卓では、『忘れじ』に比べて『帰らじ』の方が慣れというか、探索者同士やNPCとのやり取りの中に各々の関係の解像度が高くなっているのがわかって回していてとても楽しかったです。NPCに対する感情も大きくなってくるので、その分ダメージRPにも力が入ると思います。
そういった微細なところの変化も楽しめる、良質なキャンペーンシナリオです。
2.海綴じ / 結井ななきそ
傾向:奇妙で静かなホラー・短時間・後遺症の可能性有
人数:1人固定
回した回数:15回以上
軽度のHO有
<あらすじ>
あなたはひとりの部屋で目を覚ました。
枕元には美しい巻貝があるのでさみしくはなかった。
巻貝を耳に当てる。さざ波の向こうに、誰かの足音が聞こえる。
☆こんな人にオススメ!☆
- 海辺の町に暮らしたい/旅行したい!
- 落ち着いた雰囲気がいいけど、コズミックホラーも感じたい!
- 短時間のシナリオの中で探索者の解像度を深めたい!
『SHOTGUN KIXXING MARRIAGE』などで知られる、サークル『左に右折』主催結井ななきそ様の作品。
海に身体を浸ける不思議な夢を見た探索者が翌日、枕元に転がる不思議な貝殻を見つけたことから始まるシナリオです。2-3時間という短いシナリオながら、しっかりとホラーを堪能できる名作です。
発売されるまでは完全にノーマークだったのですが、発売日にトレーラーをTwitterで見てひと目見て惹かれ、即購入。そこから色んな卓の方に手当たり次第回させていただきました。気がつけば相当回回していましたね……。
このシナリオの魅力は、「自由度の高さ」と「描写の繊細さ」にあると思います。シティシナリオだからというのもそうですが、最低限のイベントがいくつかあるくらいで基本的には自由行動が多めです。
朝何をして過ごすか。どういう風に旅行先で時間を過ごすか。昼ごはんは何を食べるか。こういう状況に置かれたときどういうことをするか。どちらの決断をとるか。
このシナリオは、探索型のシナリオではありますが、ソロシナリオという性質上、些細なことでもKPと対話をしながら話を進めていくことになるので、自然と探索者の解像度も高まっていきます。
また、このシナリオを回った方から「読み物みたいだった」という感想を時折いただくように、穏やかで繊細さのある、美麗な描写が大きな特徴になっています。海の透き通るような美しさと、クトゥルフらしい底知れぬ恐ろしさを味わえます。
派手な演出やシナリオがひっくり返るようなギミックや技巧などは一切使われていませんが、しっかりクトゥルフ神話TRPGの雰囲気を体感することができるでしょう。初心者向けのシナリオとも言えると思います。
ちなみに、僕はこのシナリオに出てくるNPCがこれまで出会ったNPCの中で3本の指に入るくらいには好きです。少し変わった人ではありますが、とても魅力的な人物です。こらそこ、「確かになゃんさん好きそう」とか言わない。
3.Dの信仰 / みくろ
傾向:探索型・継続探索者・ミステリ
人数:3人固定
回した回数:1回
軽度のHO有
<あらすじ>
あなた達はとある日、それぞれ違う友人に呼び出され、同じ相談を受けることとなる。
「「「最近、友人の様子がおかしくて」」」
信仰の果てにあるものは、確かな幸福、なのだろうか。
☆こんな人にオススメ!☆
- お気に入りの継続探索者を久しぶりに使いたい!
- よその人の継続探索者とお知り合いになりたい!
- 色んなNPCに聞き込んで事件の真相に迫りたい!
『寒煙に灰くだり』『喰らわば、日常』などで知られるサークル『もう寝ろ卓』のみくろ様の作品。
各々の探索者の幼馴染となるNPCから誘いを受けた探索者達が向かった合同コンパ。しかし参加者のひとりが無断欠席してしまう。心配になった探索者達が彼女の部屋に行ってみると……というところからシナリオが始まります。
この方の作品は全体的に継続探索者を推奨するシナリオが多いのですが、この作品は特に”継続探索者限定”です。年齢や職業等の縛りもないため、継続でさえあれば比較的誰でも構いません。
そして、このシナリオでは各探索者にひとり”幼馴染NPC”がつきます。事前にどのNPCを担当するか選んでいただき、そのNPCとどういう関係だけ決めてきてもらいます。
探索型シナリオとは言っておりますが、実際のところRPも結構重要になってきます。どういうことを質問するか、どういう話をNPCに振るかによってシナリオの状況も少しばかり変わってくるので、RP力も問われてくるところですね。
また、ミステリ要素はありますが、核心を突くようなひらめきや段階的な積み重ねによる推理は必要ありません。ちゃんと必要な情報を集めていけば自然にゴールまでたどり着けるようになっています。あくまで味付けとしてのミステリだと思っていただければ……。
ちなみにこのシナリオ、今のところロケハンを兼ねての大学卓にしか回していません。前々から回そうね!と言っている卓もあるので、いつか回したいと思っております。どんな継続を連れてきてくれるかとても楽しみです。
4.ドロップアウト・ディスパイア / 茶々丸
傾向:探索型・RP中心・戦闘多め
人数:2人固定
回した回数:2回
HO有
<あらすじ>
――死んでも、その言葉は残り続ける。
貴方達は殺す対象に遺書を書かせ、その遺書をあるべき場所に届ける「遺書屋」と呼ばれている一風変わった殺人鬼だ。
☆こんな人にオススメ!☆
- 特殊なHOのシナリオがしたい!
- 銃や武器を使える武闘派を作りたい!
- やるかやられるかの世界で刹那的なうちよそがしたい!
『デウス・エクス・マキナは死んだ』などで知られる、茶々丸様のシナリオ。
名前自体は以前から聞いていたのですが、推しがちょうど回っているところを見て回すことにしました。
このシナリオの特徴は、なんといってもHOの特殊性にあります。
あらすじに書いてあるように、探索者は「遺書屋」という、ターゲットに遺書を書かせてそれを届けたい人に届けることを仕事としている、ふたりでひとつの殺し屋の探索者を作ってもらうことになります。
殺し屋としての仕事に慣れているので、現代日本でありながら、基本的にセッション中に人を殺しても罪に問われることはよほどのことがない限りありません。
そのため、普段の現代日本シナリオではなかなか使うことのできない銃や武器をメイン武器とした探索者を作ることができます。
このシナリオは2回回しました。うち片方は1PL+KPCで回しまして、色々な都合が運良く重なってなんと「うちの子」同士でセッションを行いました。自分も回ってみたかったし、1回うちの子をTRPGに出してあげたいなとも思っていたので、念願が叶ってよかったです。
もう片方の卓も実に「渋かっこいい」感じでとても良いセッションでした。元々PL同士の相性が良いという風に聞いていたのですが、実際に始まると軽妙なやり取りがとても痛快で、かつ締めるところは締める、いいコンビでした。探索者同士の長年の信頼がにじみ出てる感じが良かったですね。
今後も何度かセッションが予定されており、メンバーもとてもいいメンツが揃っていますので、これからも楽しみなシナリオです。
5.海も枯れるまで / ねこずし卓
傾向:クローズド・RP中心・後遺症の可能性有
人数:2人固定
回した回数:2回
秘匿HO方式
<あらすじ>
砂浜に打ち上げられているその人を、あなたは見つけた。
☆こんな人にオススメ!☆
- 歳の差コンビでたくさんうちよそしたい!
- たくさんのNPCと会話したい!
- ふたりでぶつかり合って、満足の行く結論を出したい!
『ソープスクール』等で知られる、サークル『ねこずし卓』様の作品です。
自分がたくさんシナリオを回して/回っていただいた方々へのお礼と、ちょうどその方々からの「回してほしいシナリオがある」という希望が重なって、回させていただいたシナリオです。
このシナリオでは「秘匿HO」と言われる、シナリオ開始時点にそれぞれのPLだけしか知らない情報が与えられます。その情報は好きなタイミングで開示してもいいですし、黙ったままセッションを終えても問題ありません。この開示するかどうかの駆け引き、HOに基づいてのRPがよりシナリオを盛り上げるエッセンスとなっています。
大きな特徴としては、「NPCの多さ」にあるでしょう。そのため、セッション中は結構RPの比重が多くなります。RPの中で探索者の解像度が上がるでしょうし、きっと思い入れのあるNPCも生まれていくことでしょう。
僕は基本的には探索者同士の会話を楽しんで聞いていたいタイプではあるんですが、KPもNPCとしてこの探索者と関わってみたい!という気持ちがあるので、NPCのRPを通して探索者と関わることができるのは嬉しい点です。
このシナリオも2回回させていただきましたが………本当にどちらの卓もね……やばいです。4人ともRP強者の方々でこれでもかというほど高火力のうちよそをたくさん見させていただきました。こんなの見ていいの?ってくらい贅沢な時間を過ごさせていただきました。本当にありがとう。所属している卓は全く違うんですが、この4人で4PL秘匿とかやってほしい。絶対狂える。
ということで第1弾、「回したシナリオ編」でした。
今年はシナリオ種類こそそこまで多くないですが、PLと同じくらいかそれ以上の回数KPをさせていただいて、本当に色んな方に回させていただきました。ありがとうございました。
皆さん本当にTRPGがお上手な方が多くて、自分は環境や周りの方にとっても恵まれているなあとKPをやっていても(PLをやっていても!)常日頃から思います。これまでもTRPGやってて良かった、と思うことは多々ありましたが、今年はKP冥利に尽きる1年でしたね。
来年はKPとしては色々と回す予定のシナリオもありますし、なんといっても自分がシナリオをコッソリ書いているので、その辺も回せたらな、と思っています。回すことになりましたらまた皆さんに回っていただけますと嬉しいです。今後ともよろしくお願いします。
気がついたら日付が変わって今日になってしまいましたが、明日は「回ったシナリオ編」をお送りします。対象は10タイトルと今回の倍ほどの記事になると思います。なにぶんいいシナリオをたくさん回らせていただいたもので……。重ね重ねありがとうございます……。
それでは!